婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
しかし 4月に入ると、彼は再び俺の前に姿を現した。
彼の会社である西園寺コーポレーションがうちの会社に大きなプロジェクトを持ちかけてきたからだ。
テーマパークの施設内にうちのアウトレットの店を出店させるというもので、かなりの好条件に上役達は上機嫌だった。
俺はその担当者に指名されたようで、最初の顔合わせに出席させられた。
『瀬崎さん お久しぶりですね。瀬崎さんの有能ぶりを聞き、社長に頼んで、あなたを指名させてもらいました。どうぞ 宜しくお願いします。』
社長室のソファーにすわり、彼は不適な笑みを浮かべていた。
顔合わせの後、俺は彼を呼び止めた。
『西園寺さん 一体どういうつもりですか?』
彼は自分の秘書を先に行かせると、俺にこう言った。
『別に… ただ あなたと仕事がしたかっただけですよ。何をそんなにムキになっているんですか? ああ なっちゃんのことなら、もう あなたに頼んだりしませんから安心して下さい。ストーカーなんて騒がれたら、僕もたまったものじゃありませんから…。』
『じゃあ なつのことは、もう諦めて頂けたんですね。』
『さあ どうでしょうね。ああ そうだ 今度のバーベキューに僕も招待されたので、なっちゃんのこと連れて来て下さいね。僕に会えるって知ったら、彼女きっと喜ぶはずですよ。だって 彼女 ずっと僕のこと好きだったんですから。ほら この写真見て下さいよ。彼女が高校生の時に一緒に撮った写真なんですけど、こんな表情、好きな相手にしかしないでしょ? 』