婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~

名前も知らない先輩に、トイレに呼び出されて、頬をひっぱたかれたこともあった。

『新人のくせに、生意気なことしてんじゃないわよ! よくも 瀬崎さんに手を出してくれたわね!』

私がいくら否定しても、聞く耳も持ってくれなかった…。
奥さんでもない人に、どうしてこんなことされなければいけないのかと、悔しくて泣きそうになったけれど、瀬崎さんに心配かけないように
笑顔で耐えた。

でも 噂は一向に収まらず、嫌がらせも増えて同じ課の女の先輩達からも仕事を押し付けられるようになってしまった。

作り方も分からないような資料作成や膨大な量のデータ入力などを定時近くに持ってくる。

『これ 瀬崎さんが帰ってからひとりでやりなさいね。』

そう言われ、一人残ってひたすらパソコンに打ちこんだ。
しかし、何日もかかってやっと終わらせたそのデーターが消された時、とうとう私の中で何かがプツンと切れた。

私は、泣きながら営業室を飛び出していた。

ちょっうど会議室から出てきた瀬崎さんが、そんな私を抱きとめた。

『杉本? どうした! 何があった?』

私を心配して覗きこむ瀬崎さんの胸で、私は思いきり泣いてしまった。

瀬崎さんは、私を連れて会議室に入ると鍵をかけた。

『杉本…。もしかして 俺との噂のことか?』

そう尋ねる瀬崎さんに、私は今までのことを全て話した。
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