婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
それから少しして、瀬崎さんと同期の夏木さんが私の所へやってきた。
『杉本 なんか 瀬崎 奥さんの体調が悪いから帰るらしい。あとは 俺が引き継いだからよろしくな。あっ 帰りも俺が送っていくから心配するな。瀬崎も杉本に申し訳ないって謝ってたから…。』
『そうですか。分かりました。』
でも 帰ったはずの瀬崎さんが中西さんの腕を
引っ張って、駐車場へと連れて行く姿を目撃した私は、こっそりと後をつけた。
瀬崎さんは人目につかない車の影で、中西さんの胸元を掴んで凄みかかっていた。
『おまえ俺の目誤魔化せると思ってんの? 俺を本気で怒らせる前に全部吐いた方が身のためだぜ? あ゛?』
えっ…?
これ 本当に瀬崎さん!?
王子様のような甘いマスクの瀬崎さんが、チンピラ顔負けのたんかを切っていた。
どうやら 瀬崎さんはなつさんの居場所を聞き出そうとしているようだった。
なかなか答えようとしない中西さんに、瀬崎さんは営業室に仕掛けたビデオの存在を明かした。
すると、それを聞いた中西さんは、突然、土下座を始めた。
そして 中西さんは、観念したように全てを話し出した。
その内容は衝撃的だった。
私と瀬崎さんの噂を流し、パソコンのデータを消したのは中西さんで、それはなんと 西園寺コーポレーション次期社長の西園寺さんが彼に命令してやらせたことだった。
西園寺さんは、今日のこのバーベキューにも中西さんを使って、なつさんを無理やり連れて来させていた。
全ては、なつさんを瀬崎さんから奪うために。
『今 なつさんは西園寺春樹の別荘にいる…』
それを聞き出した瀬崎さんは、車に向かって走り出した。