婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~

「なつさん そんなに彼女が気になるの…?」

柚ちゃんに気を取られている私に、この店のNo.1ホストの夏樹さんが声をかけた。

夏樹さんはNo.1ホストでありながら、なぜだか指名もしていない私のテーブルについていた。

「彼女 ホストクラブなんて 初めてだから…。」

「ふーん それじゃ なつさんはこういう所 には良く来るの? いけない奥さんだね。」 

そう言って夏樹さんは、私の左手に触れながらクスッと笑った。

「わっ 私は別に…遊びに来た訳じゃ…」

私は慌てて、夏樹さんに掴まれた手を引いた。

「そう? でも ここに来たからには、その気にさせちゃうけど…。」

さすがNo.1だ…。
彼の魅惑的な笑みが、どれほど女性に威力があるか分かっているのだ。

私はテーブルに手を伸ばし、ウーロン茶の入ったグラスを口に運んだ。

あれ?
なんか 酔いが冷めるどころか余計に顔が熱くなっていく。

もしかして、私も彼の色気にやられてしまったのだろうか…。

「ねぇ なつさんのご主人ってどんな人…?
こんな事したら、さすがに怒っちゃうかな…」

そう言って、夏樹さんは私の肩に手をまわして私のことを抱き寄せた。

私は酔っているせいか、彼のまわしてきた腕を振り払えずに、そのまま彼の肩に頭を乗せてしまった…。

香水の香りに包まれながら、彼の甘くかすれた声が耳に響く。

「そんな顔したら、やめてあげないよ…。」

そう言いなら、私にゆっくりと顔を近づけた。

私は微かに開いた瞳で、彼が近づいてくるのを感じた…。
ああ なんて綺麗な顔なんだろう…。

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