ヒツジ、狼と恋をする。
「…またお前か。今生徒総会だろ?
見た目のわりにサボりとかすんの?」
「し、してません!
サボりじゃないですよ!!」
廊下の壁に背中を押し付けながら必死に答える。
お願いだからこれ以上は近付かないでぇぇ…!
でも、昨日よりはまだマシな対応が出来ているかもしれない。
『藤崎くんがいるかも』というちょっとした警戒心が、なんとか自我を取り持つ。
………本当にいるなんて思わなかったけど。
「お、今日は昨日みたいに縮こまらないんだな」
「……ふ、藤崎くんはサボりですか」
藤崎くんの言葉に返すことは出来ず、なんとか一番気になったことだけは声になった。
自分でもわかるくらいひっくり返った声だけど。
「悪いかよ」
「わ、悪い…ですけど…その…」
怖さから、はっきりと「悪い」と言うことが出来ない。
煮えたぎらない私に呆れたのか、藤崎くんは私の前を素通りして廊下を歩いていく。
「えっ……た、体育館はそっちじゃ…」
「何言ってんの?
俺はサボってんだから体育館なんて行くわけねーだろ」
「え、えと………」
「何?なんか文句あんの?」
「い、いえっ…!」
ギロッ、と振り向き様に睨まれて、何も言えなくなる。
だ、男性恐怖症じゃなければ、こんな時はっきり言えるのかな…。