ヒツジ、狼と恋をする。
「ヒツジちゃん、千夏!
あんたらそろそろ交代だよー!」
「はーい!
ヒツジちゃん、行くよ!」
「えっ、もう?
じゃあ早くご飯食べちゃわなきゃ!」
クラスメイトの声にハッと時計を見ると、もうすでに12時を回っている。
はやっ!!
ほんとに気付かなかったよ!
今担当しているお客さんに注文を届け、急いで裏に回る。
「はい、まかないサンドイッチ!」
「わぁ、ありがとう!」
私たちのクラスのカフェで、メニューとして出されているサンドイッチ。
それの素材の切れ端のお客さんには出せない部分で作ったこれが、まかないサンドイッチである。
いくら切れ端といっても味は同じだし、実際すごく美味しい。
「ん~!美味しい!」
「ヒツジちゃんなに飲む?」
「あっ、じゃあオレンジジュースもらっていい?」
「オッケー」
千夏ちゃんがてきぱきとオレンジジュースを持ってきてくれる。
千夏ちゃんはブラックコーヒーを持っていた。
「えっ、千夏ちゃんブラック?
苦くない?」
「え?
んー、苦いんだけどね…でも、好きだから」
「………?」
千夏ちゃんのいつもとはちょっと違う穏やかな笑みに、何か重要なものが隠されてる気がして。
つい、食べる手が止まってしまう。
「ヒツジちゃん、止まってる場合?
もうそろそろ行かなきゃいけないけど」
「あっ!ごめん!!今食べる!」
慌ててサンドイッチにかぶり付くと、千夏ちゃんが吹き出した音が聞こえた。