ヒツジ、狼と恋をする。



「おい」


「ひっ!?」



あぁもう、どれだけ最悪なの!?


なんでまた藤崎くんが…!


気が変わったとか?


もう見逃してやんねーみたいな!?


焦りと恐怖が入り交じって、パニックになる。



「だから、んなに怖がんなくても大丈夫だっての…。
ほら、これだろ、探してんの」



訳がわからなくなっている私の前に、バサッと紙束が置かれる。


………確かに、私が探していた紙だ。


生徒総会のプリントの、5ページ目。


すぅっと頭が冷えていくのがわかる。



「な、なんでこれ…」


「さぁ。なんか向こうの教室にあったんだよ」


「あ……ありがとうございます!
助かりました!」


「お、おう…?」



焦りも恐怖も一気に吹っ飛んだ。


とにかく、今はこれを早く届けないと!



「藤崎くん、本当にありがとうございます!」



ポカーンとした様子の藤崎くんにバッと頭を下げて、紙を抱えて教室を飛び出す。


教室の入り口に藤崎くんが立っていたものだから、すれ違い様に肩がぶつかってしまった。



「あっ、すいません!」



でも、気にしている暇はない。


一言謝ると、私は振り返らずに一直線に体育館に向かった。





< 16 / 155 >

この作品をシェア

pagetop