ヒツジ、狼と恋をする。
「おい」
「ひっ!?」
あぁもう、どれだけ最悪なの!?
なんでまた藤崎くんが…!
気が変わったとか?
もう見逃してやんねーみたいな!?
焦りと恐怖が入り交じって、パニックになる。
「だから、んなに怖がんなくても大丈夫だっての…。
ほら、これだろ、探してんの」
訳がわからなくなっている私の前に、バサッと紙束が置かれる。
………確かに、私が探していた紙だ。
生徒総会のプリントの、5ページ目。
すぅっと頭が冷えていくのがわかる。
「な、なんでこれ…」
「さぁ。なんか向こうの教室にあったんだよ」
「あ……ありがとうございます!
助かりました!」
「お、おう…?」
焦りも恐怖も一気に吹っ飛んだ。
とにかく、今はこれを早く届けないと!
「藤崎くん、本当にありがとうございます!」
ポカーンとした様子の藤崎くんにバッと頭を下げて、紙を抱えて教室を飛び出す。
教室の入り口に藤崎くんが立っていたものだから、すれ違い様に肩がぶつかってしまった。
「あっ、すいません!」
でも、気にしている暇はない。
一言謝ると、私は振り返らずに一直線に体育館に向かった。