ヒツジ、狼と恋をする。
~藤崎 晶side~
「あっ、すいません!」
俺にぶつかってそう言い残し、風のように去っていった女。
男嫌いで有名な井上 ツツジだ。
最初会ったときなんて…って昨日のことだけど、あんなに腰抜かして、俺が近付いただけで縮こまってたくせに。
今はぶつかっても怯みもしねぇ。
男嫌いって言うのに、昨日もわざわざ俺に謝ったり、お礼を言ったり、訳がわからない。
「………変なやつ」
俺のあいつへの第一印象。
変なやつ。
怖いなら昨日、話しかけなくても良かったのにな。
「……あ?なんだあれ」
ふと、あいつがさっきまでいた教室を覗き込むと、ピンクい携帯が見えた。
こんなところ、普段使われねーし…絶対あいつのだよな。
「仕方ねぇな…」
今日はもう生徒総会が終われば下校だし、それまでにあいつが取りにこなけりゃ届けてやるか…。
まぁ、普通携帯が無いことに気付かないようなアホはいないだろ。
…………なーんて、その後は下校終了まで、マジで取りに来なかったんだけどな。