ヒツジ、狼と恋をする。
………いや、考えてみればこの状況、端から見ると確かに『不良』で名が知れている晶を『男性恐怖症』で名が知れている私が荷物持ちに使っている…と見ることも出来るわけか。
そりゃまあ…。
ヒツジが狼を飼い慣らしていたら、好奇の目にさらされるのも当然のことだろう。
実際は飼い慣らすとかじゃないし、友達になっただけだけど。
「ここか。
………よしっと、じゃあ俺、戻るから」
「うん、ありがとう」
生徒会室に紙の束を置いた晶は、そのままここを出ていった。
生徒会室に入った途端からヒシヒシと感じる…生徒会の皆からの視線を置いて。
背中をつぅ、と冷たいものでなぞられたような気分だった。
「……………ヒツジちゃん!?」
晶が出ていって数秒の沈黙の後、その場が一気に沸いた。
私に向かって、人が押し寄せる。
「ひ、ヒツジちゃん、今の何!?
藤崎くんだよね!?」
「あ…はい…」
「何々、何がどうなっちゃってるの~!?
男性恐怖症は大丈夫なの?私、感激っ」
そういって、ミウ先輩は飛び付いてくる。
「えと…」
「いやぁ、男の子に慣れてくれればとは思っていたけど、まさかあの孤高の狼がお相手なんてね!」
「ここうのおおかみ…」
「しかも今日学校来てたんだ?
ヒツジちゃんだけが知る藤崎くんの秘密…秘密の恋!?」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
恋とか何!?
ミウ先輩、1年生のときはこんなに明るくなかった~なんて言う噂があるけど。
もしその噂が本当なら、何がミウ先輩をこんなに変えたんだろう?
むしろ明るくないミウ先輩の想像がつかないんだけどね私は!