ねぇ、愛してよ…-私に愛を教えて下さい。-
壱之弐
「ざーす、遅れましたぁー」
「お、おはようございます、遅れてすみません」
教室の前と後ろにある扉の前側を堂々と開けて悪びれもせず挨拶をするあたしに対して至極申し訳なさそうにあたしのあとから入る弥和。
「佐脇(サワキ)が遅刻なんて珍しいな、髪色も変わってるし…新学期早々どうした?」
英語の授業中だったようで英語担当の教師はあたしを一瞥して困ったような顔をしたあと弥和に目を向けた。
そういえば弥和の苗字は佐脇だったな、なんて思いながら
「うるせぇな。年頃の女をいちいち詮索してんじゃねぇよ、校則の範囲内の色だろうが」
教師を睨みながら言う。
「佐脇は実澤と一緒に来たのか?」
そんなあたしをスルーして咎めるような口調の教師にイラッとした。
「おい、弥和もあたしもただの寝坊だよ。下駄箱で出くわしただけだ、なぁ弥和」
「えっ…あ、うん…」
弥和に目で頷いておけと合図すると慌てながらも頷いた。
「そ、そうか。けど新学期早々遅刻なんて…」
「わかったから授業始めろよ」
納得しておきながら説教を始めようとする教師を黙らせ席につく。
が、あたしの机の上に英和辞典やら和英辞典やらが積み重ねられていて荷物を置けない。