ねぇ、愛してよ…-私に愛を教えて下さい。-




「あれ、マジで?」




たかさんが牛丼だったのに対しあたしはカルビ丼なのでタレがつきやすい。




気をつけていたがついていたようだ。




「ま、たかさんは人のこと言えないけどね」




ティッシュで口を拭いながらニヤリと笑う。




「あなたもな」




その通りだ。




同じようにニヤリと笑って言ってきたたかさんに思わず笑う。




「ん、そういえばあなたほんとに仕事辞めるの?」




ふと思い出したように言うたかさんに、あたしは諦めにも似た苦笑を溢す。




仕事云々のことではない。




あなた、という呼び方についてだ。




たかさんはあたしの名前を呼ばない。




それがたかさんなりのボーダーラインなのか、ただ単に呼びたくないのか、それとも特に意味はないのか。




理由はわからないが究極の状況になるまで絶対呼んでくれない。




元々あたしはももという名前が好きではなかったのだけど、いつの間にか、自分でも気づかないうちに一番しっくりくる名前になっていた。




それに、名前があって、名前で呼ばれることで、自分の存在を確認できる。




あたしは今ここに生きているんだ、と。




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