心ーKokoroー
だけど医者の願いは
儚く散って行った
彼は事件を起こしてしまった
それも少女と男性を殺した
彼を生かす
あの心臓の持ち主と
同じような年頃の2人を殺したのだ
「やっぱり止めれば良かった
わたしがあの時止めてさえいれば
彼は事件なんて起こさなかった……
わたしの責任です…刑事さん」
医者は悔いた
泣きながら悔いた
「だけど…
生かしてやりたかったんです
どうしても…
彼は幼い頃から
ずっと病院での生活でした
どこかへ遊びに行くことも
スポーツさえも出来なかった
全てが彼にとって命取りだった
わたしはずっと見てきました
だから知っています
元気になって退院していく子どもたちを
笑顔で見送りながらも
あとで泣いている彼を
“どうして僕だけ退院できないの”と
泣いている彼を
わたしは何としてでも助けたかった…
例えどんな結末になったとしても
わたしは…わたしは……」
血の繋がりなどない彼を助けたい
そう思って流した涙を見て
警察も一緒に涙を流した