心ーKokoroー
心臓の持ち主








その男性は

真面目な人だった




決して目立ちはしなかったが

悪いことは一切せず

部屋の片隅で黙々と

仕事をこなしているような男だった




男性は彼同様

両親がいなかった

物心ついた時には存在せず

児童養護施設で暮らしていた



家族がいる人が羨ましかった

素直に職員に甘えられる人が羨ましかった

男性は決して口には出さなかったが

人一倍羨ましがることや

嫉妬することが多かった




男性は無口で

必要最小限のことは

一切喋らなかった

やらなくてはいけないことは

こなすけど

それ以外は喜怒哀楽もなく

口を開くこともなかった




それは何故か?

口走ってしまいそうだったから

幼い頃から男性の心の中に渦巻く

ある感情を







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