僕があの子を好きになっても良いですか?
それがただの夢物語だって知っている
あの子はクラス委員長だから優しくしてくれているって言うのも知っている
病室に来てくれるその理由も先生に言われたからだって知っている
だけど
ずっと僕はそれさえも見ることが出来なかったんだ
だからお願い
今だけは夢を見させてほしかった
救急車に乗る際
一瞬だけ見た
あの子のホッとした笑顔
あの笑顔を傍で見られるだけで
…僕は幸せだと感じることが出来たんだ
だけど―――
「なぁ知ってるか?」
黒木さんと小谷さんが食材などを取りに行っている間
僕らは器具の準備をしていた
その時聞こえてしまったんだ
黒岩さんと同じ班の男子が話しているのを
「黒木って好きな奴いるらしいぜ?」
その言葉に
思わず持っていた鍋の蓋を落としてしまった