夕焼けに照らされて
 ひかるの気持ちがなんとなく落ち着かなくなったのは、電車に乗ってから――誠との話を思い出したときからである。
 とはいっても、落ち着かない気持ちは8割好奇心 2割心配から来るものであるが。
 工藤誠という人物、彼の探し物とはなにか。その2つの謎がひかるの頭の中をぐるぐるとめぐるのだった。


 誠の席は教室の一番後ろにある。席についたひかるは、ちらりと後ろを振り返り誠の席に目を向けた。
 誠は、静かに読書中である。朝の騒がしい教室など全く気にならないようだ。ぎゃあぎゃあとふざける男子の横にいながらも、涼しげな顔でページをめくっている。

 ひかるは、そんな誠から視線を戻そうとしたとき――、ふと誠が本から目を離してひかるの方を見た。

 ひかるがどきっとしたのは言うまでもない。ひかるが教室に入ったことにさえ気づかかないほど、読書に集中しているのだと思っていた。

 相変わらずよくわかんないなあ。
 そうひかるはぼやいて、何事もなかったかのように、誠に向いていた目線を前に戻した。 


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