夕焼けに照らされて
「それにしても、工藤くんって綺麗な顔しているわよね。」
「うん。下手すればこの学校の女子全員でかかっても負けないかもしれない。」

そう言って、工藤誠の顔をちらりと見る。静かにお弁当を食べる誠は、相変わらずの美少年である。誠の黒髪を見て、ひかるは突然あることを思い出した。

「そういえば佳之子。黒髪の幽霊の噂って、うちのクラスから生まれたんだよね。」
「うん、そうだけど。」
「それってさあ、誠がうちのクラスにいるとが関係してんのかな。」
「うーん。」

 佳之子は、ひかるの言葉を聞いてそうかもしれないと思った。佳之子は今まで全く気づいていなかったが、黒髪の美しい幽霊が誠をモデルにつくられたと十分に考えられることだった。

 ひかると私を除く女子は皆、工藤くんに憧れを持っているけど、クラスの男子はそんな様子を見て気分がいいわけないものね。工藤くんに嫉妬した男子が、からかうつもりで、広めたのかしら。
 ちなみに佳之子が誠に興味がないというのは、自分のタイプと違うといういたって普通の理由からである。

「ひかるのその考え、正しいかもしれないわね。工藤くんって女子にきゃあきゃあ言われてるから、一部の男子が嫉妬して“噂”を広めたのかも。」

それに、と佳之子は続ける。

「誠くんってさ、気がついたらいないことがよくでしょ。あんなに目を引く見た目をしてるのに、誰も気がつかないことが多いじゃない? 先生はなにも言わないし。不思議なのよね・・・。」

ひかるは驚いて、教室の隅にいる誠を見た。そんなことがあったのか。
 ひかるは、きゃあきゃあ言う女子に囲まれることの多い誠を視界に入れないようにしていたため、その事に気がついていなかったのだ。


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