恋愛シーソー


驚いて思わずこけかけた。
咄嗟に先輩が腕を引いてくれたから盛大に転倒することはなかったけれども、動揺したのがばればれだ。


「い、い、いませんよ!」

「まだ男嫌い直らないの?」


もったいない。と先輩は残念そうに言う。


「葵ちゃん美人だから告白とかされるでしょ」

「そりゃあ…何回か…」


咄嗟に何故か嘘をついた。
自分では理解しがたいが、周りからはよく美人と言われることが多い。

けれどだからと言ってもてるかというと、それはない。

もともと男が苦手で避けまくっているのに、向こうから寄ってくるわけがないのだ。




けれど何故だろう。
モテない女だとは、思われたくなかった。




なんだかよくテレビで

「結婚できないんじゃなくてしないのよ!」

と言っている行き遅れタレントのようで、何となく情けなかった。





「じゃあ萩は? あいつ無口で無愛想だけどいい奴だよ」

「・・・どうしてそこで萩君がでてくるんですか」

「俺のカンだけど、萩は葵ちゃんのこと好きだと思うんだよね~」

「っそうですか!!」


なんだか泣きたくなってきた。

どうしてだか、わからなかったけれども。












お化けたちに盛大に驚かされながら、ずっと下を向いて歩き続けたら出口だった。
ずっと暗闇だったから目が痛い。


「葵!? あんたそんなに恐かったわけ?」


涙目だったので驚いたのだろう。

「ペアが悪かったわね」と頭を撫でてくれた。
涙の理由は恐かったのだということにして、あやめに抱きついて半泣きの顔を先輩から隠した。







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