恋愛シーソー
もともと自分は極度の緊張家だ。
思い出せば2年前、全国大会の決勝前に緊張のあまり泣き出したりもした。
あやめなんかは負けた理由を「肝の大きさで負けた」と言っているくらいだ。
そんな私が、好きな人とペアを組んで試合して、まともな状態でいられるはずがないのだ。
「ゲーム6-4!! ウォンバイ萩・太郎ペア」
接戦ではあったが負けた…。
明らかに自分のミスで負けた。
打てばネットにかけるわ前衛にひっかけるわ…おまけに得意のコース狙いもうまく決まらなかった。
もう、最悪…
「すいません…」
「いよいよ。連戦はさすがに葵ちゃんでもキツいもんね」
びくびくしながら謝りに行くと、そう言ってぽんぽんと頭を撫でてくれた。
…不謹慎だがかなり嬉しい。
「よし!そしたら葵ちゃんはシングルス2でいこうか。1は萩な」
「はい」
1週間分の対戦結果を見ながら、薫先輩が当日のレギュラーを決めていく。
ダブルスではなくシングルスになったことに安堵したけれど、ダブルスでは使えないと判断されたんだろうと思うと、なんだか悲しかった。
もしさっき頑張っていたら、試合でも二人で一緒に戦えたかもしれないのに。
「大丈夫ですか?」
しょんぼりしていたからだろう。
萩君が声をかけてきてくれた。
「ん?大丈夫大丈夫」
「そうですか…。当日、よろしくお願いします」
彼はそう言って軽く頭を下げた。
シングルス2はもしシングルス1の選手が負けた時が大変だ。あとが苦しくなるから、絶対に勝っておきたいポジションで、2を任されたということは誇りに思っていいことだ。
「うん、ヨロシク。ちゃんとフォローするから、気負わず初戦、がんばって」
「はい」
少し笑ってくれた。
1つ年上だけれど同じ学年ということで、同級生とは普通にタメ口で会話し合っている。
けれど萩君はいつまでたっても敬語で、正直嫌われてるのかなと思っていた。
多分、彼の性格的なものなのだろうと、最近は思っている。
『萩は葵ちゃんのことが好きだよ』
だから、きっとそれはない。