恋愛シーソー
「ら、乱打からしようか」

早く早くと周りはせかすけれど、こちらは2年ぶりにラケットを握るのだ。
準備運動くらいはさせてもらいたい。

萩くんはこくりと頷くと、ボールを持って反対コートに立った。

無口な子だ。


無言の同意のもと、乱打が始まった。





はっきり言って、上手い。




力加減をしてくれてるようで、力強いボールは来ない。
けれど確実に自分の右側にボールが返ってくる。


時々妙な回転をかけてくるのはスタイルなのかそれとも挑発なのか…


試合前にする乱打の、この探りあいがスリルがあって好きだった。

根っからのテニスプレーヤーは、2年離れても変わらないらしい。


楽しい。


自然と顔が笑っていた。



「スイッチが入ったね」


背後のギャラリーの中で、あやめがそう言ったのが聞こえた。


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