Uncontrolled(アンコントロールド)
いつもの朝倉とはどこか違うとふと気付いたことにきっかけはなかった。取り留めもない話をしている彼の隣りで相槌を打ちながら様子を伺ってみても、どこがとははっきり言えない。それでも違いに気付くくらいには同じ時間を重ねてきた。
「星名ちゃん。そういえば、見逃した映画があるって前言ってたでしょ。まだ時間早いし、一緒に俺んちで観ていかない?」
駅が近付いてきた頃、朝倉はいつもの調子を取り戻したように提案してくる。
確かに今日は待ち合わせが早かった為、まだ21時を回ったばかりだ。2時間映画を観ても終電には十分間に合う。
駆け引きめいたことは言われたものの、実際に朝倉がフィジカルな関係に持ち込もうと考えているかは別の話だし、後輩の彼女を部屋に誘うのは少し逸脱した行為にも思えるが、何より、朝倉であれば、わざわざ男持ちの星名に対して回りくどいことなどしなくても、一声掛けるだけで一夜を共にできる女性は数知れずいるはずだ。
寧ろ、辞退した方が自意識過剰のような気がしてしまうし、彼の私生活を見てみたいという率直な思いもある。
恋人がいる身にも関わらず、別の異性の部屋を訪れるのは正しい選択とは思えなかったが、それでも、もう少し朝倉に近付いてみたいという感情が遥かに上回り、星名は素直にその衝動に従うことにした。
最寄駅に降り立ちレンタルショップでDVDを借りると、マンションまでの道すがらにあるコンビニにも立ち寄る。朝倉に待っているように言われた為、星名はファッション雑誌を手に取ってペラペラと捲りながら、窓ガラスに時折映る彼の姿を目で追う。
まだ恋を覚えたばかりの学生時代に経験した、擽ったいような甘酸っぱい感情が、静かに、けれども滾々と嵩を増していく気配を覚えて、一度は、ここで引き返した方が良いのでは?という思いが脳裏を過ぎったが、いつの間にか会計を済ませ星名のすぐ側まで来ていた朝倉に肩をポンと叩かれ、見上げた先にある彼のきらめく澄んだ瞳に映る自分の姿を見つけると、その迷いはあたかも吸い込まれてしまう。
「星名ちゃん。そういえば、見逃した映画があるって前言ってたでしょ。まだ時間早いし、一緒に俺んちで観ていかない?」
駅が近付いてきた頃、朝倉はいつもの調子を取り戻したように提案してくる。
確かに今日は待ち合わせが早かった為、まだ21時を回ったばかりだ。2時間映画を観ても終電には十分間に合う。
駆け引きめいたことは言われたものの、実際に朝倉がフィジカルな関係に持ち込もうと考えているかは別の話だし、後輩の彼女を部屋に誘うのは少し逸脱した行為にも思えるが、何より、朝倉であれば、わざわざ男持ちの星名に対して回りくどいことなどしなくても、一声掛けるだけで一夜を共にできる女性は数知れずいるはずだ。
寧ろ、辞退した方が自意識過剰のような気がしてしまうし、彼の私生活を見てみたいという率直な思いもある。
恋人がいる身にも関わらず、別の異性の部屋を訪れるのは正しい選択とは思えなかったが、それでも、もう少し朝倉に近付いてみたいという感情が遥かに上回り、星名は素直にその衝動に従うことにした。
最寄駅に降り立ちレンタルショップでDVDを借りると、マンションまでの道すがらにあるコンビニにも立ち寄る。朝倉に待っているように言われた為、星名はファッション雑誌を手に取ってペラペラと捲りながら、窓ガラスに時折映る彼の姿を目で追う。
まだ恋を覚えたばかりの学生時代に経験した、擽ったいような甘酸っぱい感情が、静かに、けれども滾々と嵩を増していく気配を覚えて、一度は、ここで引き返した方が良いのでは?という思いが脳裏を過ぎったが、いつの間にか会計を済ませ星名のすぐ側まで来ていた朝倉に肩をポンと叩かれ、見上げた先にある彼のきらめく澄んだ瞳に映る自分の姿を見つけると、その迷いはあたかも吸い込まれてしまう。