Uncontrolled(アンコントロールド)
「このソファ、素敵ですね。キャメルって私も好きなんですけど、バッグとかでもなかなかこれだっていう色を見つけるの大変で。でも先輩の、私の理想の色です」

勧められて腰を下ろしたソファの座面を手のひらでそっと撫でる。
艶やかな皮の照りや少し年季の入ったところどころにある皺も、まるでそれが正解かのように美しい。

「そう言ってもらえると嬉しいな。まだ新入社員のときに一目ぼれして、ボーナス叩いて買ったんだ、それ。当時は狭い1Kで暮らしていたから、ソファにベッドにで足の踏み場がなくてね。年々、日焼けや劣化でいい色になってきて、俺も今が一番好きかな」

朝倉がノンカフェインのフレーバーコーヒーが入ったマグカップを両手にキッチンから戻ってくる。片方を星名に手渡すと隣りに腰を下ろす。
先程コンビニに立ち寄った際に朝倉から何を飲みたいか聞かれた為、星名は温かいコーヒーと答えた。彼は時間を考えてノンカフェインのものを選び、コーヒーの他には、明日の朝食用にと食パンとヨーグルト等を購入したと話した。

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