腐女子姫と七人の王子様
「何って……フフフッ。これを見せようと思ってね」
紫臣くんは、完成間近のキャンバスの絵を私に見せた。
「!」
上手い!すげぇ!
幻想的な架空の街が、絵の具だけで描かれている。
天ノ川や飛び立つ蝶も美しく、今にも飛び出して来そうなくらいリアル。
青と紫を基調としたその世界観は、あっという間に私を魅了させた。
「気に入ってくれたかな?」
目をキラキラさせながら絵を見る私を見て、紫臣は満足そうに微笑む。
「うん、凄いよ、これ!……じゃなくて!そんなの良いから手錠外せ!私を解放しろー!」
「この絵に、何か気づかない?」
騒ぐ私をガン無視し、紫臣くんは最後の仕上げにかかる。
廃ビルの屋上に立つ旗の模様を描いたら、完成みたい。そこまで来て、やっと私は理解出来た。
「え……あ!『カケラシティ』だ!」
私が文芸部の活動で、去年の学校祭の時に文芸部誌に書いた物語、『カケラシティ』の絵だった。
頭の中で考えた物語の街とこの絵は、そっくりだった。
主人公が乗った電車や、仲間と出会った廃ビルなど、全て同じ。