腐女子姫と七人の王子様
「着きました。ここです!ここに、先輩を連れて来たかったんです……」
「……ここって……うわっ!」
竜胆くんが連れて来たのは、この町で一番ずば抜けて高い木のてっぺんだった。
高い木と言っても何百年もここにある長生きな広葉樹だから、枝も太く安定感があって、怖いという気持ちは無い。
ツリーハウスが余裕で建てられるくらいのスペースに、竜胆くんは私を下ろしてくれた。
この木の高さよりも私は、この真上に広がる星空に目を奪われていた。
「綺麗……」
「でしょ?……本当はここ、僕だけの秘密の場所なんですけど……先輩には見せたくて」
そうか。竜胆くんは写真部だから、こんな場所を知ってるのか。
「先輩は……夜空がお好きだと、先輩のお友達に聞いたので」
亜希乃か蝶羽のことだな。
確かに私は、二次元も好きだけど、三次元の夜空や星空も好き。
二次元では再現出来ない、二次元には無い、どこか引き込まれるような、吸い込まれるような、神秘的な印象があるから。
それに、広く大きな夜空を見てると、少しだけ濁った心が洗われるような気分になる。
私は視線を隣に移し、竜胆くんを見た。
マッシュルームカットに近い幼げな髪が、夜風に揺られてる。
……夜だからか?昼間にあった時は可愛く見えたのに、今は、凄く格好良く見えるな。