腐女子姫と七人の王子様

「♪どこにも居ない君想い
今宵も一人で涙を流す」

腹から声を出すよう意識して、集まってきた人達全員に聴こえるよう心がけた。

皆不思議そうな顔で私を見てる。

うぅ。どんな罰ゲームだよ、これ……

「♪刹那に感じた熱い火は
絶対消せない消えない

夜闇に紛れ隠れそうな
この声を空へ届けたい」

チラリと視線を後ろに向けると、時雨澤がギターを高速で掻き鳴らしていた。

……真剣な顔。

初対面がアレなせいで、自己中馬鹿だと思ってたけど、好きな事には熱心なタイプなのかな?

「♪涙の風で廻る緋色風車
この叫びも朱に溶けて

この声枯れても風吹く
この身朽ちても風吹く」

サビに近づくと曲はどんどん盛り上がっていき、客の顔つきも変わってきた。

なんだろう。この感覚。

身体の奥からゾクゾクしてくる。

「♪カラコロと下駄鳴らし
きっと天に届くように

爪を立てて掻き鳴らせ
この赤き轟と古の契を」

サビに入ってくると、吼えるように私は歌った。

なんだろう、心臓が熱い。

この熱いのを外へ吐き出したい。
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