腐女子姫と七人の王子様

まだ五月だってのに、汗で髪が濡れてきてる。

緩く結んだポニーテールがウザったくなるくらいに身体を揺らした。





曲が終わると、わあっと盛大な拍手が送られた。

皆、笑顔で良かったすごかったと感想を述べてる。

一応成功、なのかな。

客が全員去ってから、私はそのまま地面にへたりこんだ。

お、お、終わったぁ……

「ん」

ぴとっと冷たいものが頬に当たる。

振り向くと、時雨澤が冷えたスポーツドリンクを私の頬に付けて渡していた。

「お、ありがと」

それを受け取り、蓋を開けて一気に喉に流し込む。

はあぁ、生き返る……

全力で歌うのって、体力使うんだな。

中学時代、空手部に入ってた時を思い出す。

練習の後もこんな感じだったっけか。

でも唯一違うのは、疲れてるはずなのに謎の達成感と満足感があるって事。

「良いだろ、歌って」

隣に腰かけ、時雨澤が語り出した。
< 55 / 71 >

この作品をシェア

pagetop