腐女子姫と七人の王子様
「ただ歌詞に抑揚とリズムを付けるだけじゃねぇ。人の心に響くような歌詞をリズムに乗せて、魂を叩きつける感じで人に伝えるんだ」
「……なんだそれ。詩人かよ」
でも、本当にその通りかも。
いつの間にか、ギターの音が身体の奥に叩きつけられてる気分になってきて、押し出されるように腹から声が出た。
「で、どーだった?」
「ふっ、結構楽しかったよ」
怒鳴る以外でこんなに大声出したのなんて、初めてかもしれない。
清々しい気分だ。
「だろ?楽しいだろ?だから、これからもオレとユニットを組んでほしい」
「え?」
「オレのギターとお前の歌、結構良い組み合わせだと思うんだけど」
時雨澤はスポーツドリンクの最後の一口を飲み干した。
白い喉がこくんと動く。
「オレは去年あたりからお前を見てたけど、喧嘩の強いお前も、文芸部で小説を書くお前も良い顔してたが、歌ってる時が一番良い顔してた」
時雨澤は去年から友達を通じて私を知ったらしい。
「才能あるよ、榊」
才能……才能かぁ。
そんな事言われた事無かったな。