腐女子姫と七人の王子様
文芸部に入ってても良い作品が書けてるわけじゃないし、喧嘩が強いのも兄達に鍛えられたおかげで、天性のものじゃない。
だけど……
「おあいにくさま。好きな事とやりたい事と出来る事は、全部別モンなんだよ」
私が今一番やりたいのは、蝶羽と亜希乃と一緒に居る事だ。
もし本気で音楽の道を歩いたら、二人と離れちゃう。
「確かに歌うのは楽しかった。だけど、私は『楽しい』で止まってるんだ。そこから更に歌唱力上げるとか、芸能界を目指すとか、そういった目標に繋げられない」
「……そっか」
時雨澤はちょっと残念そうに呟いた。
思い通りに行かなかったのを悔しがるように、後ろのゴミ箱に空になったペットボトルを捨てた。
「悪いね。でも、楽しかったからまたやりたいかも」
「分かった。次はお前が彼女になってからカップル成立記念にやろうな」
「なんでそこに飛ぶんだよ!!」
本当に、こいつの頭の中は自分が中心で回ってる。
そういう考えが出来るの、逆に羨ましいよ。
絶対本人には言わねーけど。
私は距離が近くなった時雨澤の肩を、ペシンと冗談交じりにひっぱたいた。