腐女子姫と七人の王子様

明比さんはピンクの薔薇を摘み取ると、私の髪に付けた。

耳元に冷たい手が触れて、くすぐったい。

「やはり美しい貴女には、花がお似合いですね」

「……ピンクの薔薇の花言葉って、『しとやか』『上品』『感銘』とかじゃありませんでしたか?」

真逆すぎるでしょ。

そんなの、私に似合わない。

それとも、ただキザったらしいセリフを言いたいだけ?

「おや、合ってるでしょう。貴女の奥底に眠る愛らしさ、私は知ってますよ」

「あ、愛らしさって……」

おいおい、どの辺がだよ。

現に体育座りと胡座の中間みたいな座り方してるし、スカートの中に体操着のハーフパンツ履いてるし、履いてるスニーカーは兄のお下がりな上に泥だらけで汚れてるし。

「そうですね……例えば」

明比さんは私の方を掴むと、グッと引き寄せた。

そして耳をペロリとひと舐めする。

「ひぅっ?!」

一瞬すぎて何が何だか分からなかった。

え、今、何やった、この人?!

「こんな顔とか。とても可愛らしいです」

驚きを通り越して呆れる。
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