年下彼氏の甘い罠


「はい。尾崎さんと仕事させて頂いて、やり甲斐もあって楽しいです。」


結城さんがいつもの穏やかな口調で、私の心配を全て打ち消す答えをくれた。


結城さん…。


思わず彼をじっと見つめていると、その視線に気付いて少しはにかんだ笑顔を浮かべた。


またドキンと心臓が跳ねて、私は慌てて視線を谷内部長に向けた。


「尾崎くんも、同じみたいだね。」


私の考えを読み取ったのか部長が代わりに答えてくれる。


「…はい。」


恥ずかしい…。


私の考えてることっていつもみんなお見通しなんだろうか…。


「そうか。それはよかった。」


部長がいつになく陽気に話してくれる。


「谷内部長?」


この話しには何か続きがある気がして、先を促す。


「いや、実は今日接待にと思って予約した料亭があるんだけど、先方の急な用事でキャンセルになったんだ。」


「…はい。」


嫌な予感がする。


いや、嫌ではないけど…。


「店側との約束でキャンセル料は100%取られてしまうから、できれば君たちに行ってきてもらいたいんだよ。」


「もう支払は済ませてあるからね。」と部長は悪戯っぽく微笑んだ。






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