奇聞録八巡目
お墓には基本幽霊は居ない。
人魂が昇るなんて話は、昨今聞かなくなった。
ただ、墓石をかじる子供が居る。
やけに大きな口で、裸で。
笑いながら墓場を走っているが、他の人は見えていないようだ。
一度声を掛けてしまった事があった。
黙って私の後ろを着いてくる。
よく見ると、頭には石の地蔵の首が乗っている。
そして口を開けている。
底知れない真っ黒な口。
「ネエ、カジッテモイイ?」
私に聞いてくる。
私は、「かじちゃだめ!」と、言うと。
「ノマナイカラ。」
と言う。
無視していると、突然私の横を通り過ぎ、墓石にかじりついた。
たまに墓参りに行くと、まだあれを見掛ける。