奇聞録八巡目
新幹線の高架下の柱に顔が浮き出たようなシミがある。
誰が手向けたか知らないが、花が供えられていた。
きっと事故死した遺族が供えたのだろう。
老婆がシミに話し掛けていた。
ニコニコと笑いながら、楽しそうに会話していた。
何を思ったのか老婆は、柱に向かって走り出し、頭から激突した。
そして血を吹き出し、崩れ落ちた。
しばらくすると、顔のシミから上半身だけを出した黒い影が、老婆の砕けた頭を持ち上げ、シミの中に引きずり込んでいく。
何事も無かったように、静寂が辺りを包む。