【短集】Color
【HYDRANGEA】
澄み切った空。
白い雲。
6月の爽やかな朝。
『握り方、違う』
私は武道の父を持つ。
もちろん、私も剣道をしている。
そして、今も、師でもあり敵でもある人と剣道の練習。
「…すみません」
汗が止まらない。
この人には、到底勝てないのだ。
『行くぞ』
少し長い黒い髪に、切れ長の目。
そして強く優しい、私の師。
…憧れだった。
師には、足元にも及ばない。
「はいっ」
辺りは澄み切った空気が美味しい、まだ静かな早朝。
師とひたすら練習する。
昨日降った雨が、花々を濡らす。
それが光にあたり、眩しく光る。
私の好きな庭で、好きな師と、好きな剣道をする。
…バサバサッ
……鳥?
『気を抜くな』
師に見破られる、と同時に私は負ける。
「はぁっ…」
『…試合中は集中しないと勝てないぞ』
ふふっと微笑む師を見て、私の顔は熱くなる。
『でもさっきよりは良くなったな』
日が草花を照らす。
草花についた露は、キラキラと輝く。
それが好きだ。
「師匠…これからも宜しくお願いします」
この人に勝てる事は無いかもしれない。
だけど、頑張って見せる。
父のように、なりたい…それが私の夢なのだ。
『頑張れ』