君の聲だけ響いてる
第1話
「好きです....つ、付き合ってください!!」
肌を突き刺すような寒さの今日この頃。
少女漫画のようなベタな告白現場を目撃してしまった。
顔を赤らめ告白しているのは可愛くて有名の山田さん。
小動物のように小さく可愛く、性格までいいと評判な子だ。
この子の告白を断るやつなんていないだろう。
きっと相手も笑顔またはニヤけた顔で喜んでと返事をするに違いない。
そんなふうに思っていた。
しかし次に聞こえた声は私の予想を裏切った。
「え?なに?ごめんもう1回言ってもらってもいい?」
まさかの一言にガクッと力が抜ける。
あんなに顔を赤らめながら伝えた"好き"ということばもう1回言えと相手の男は言ったのだ。
さすがにこれには同情する。
山田さんの顔は見る見るうちに怒りの表情に変わっていく。せっかくの可愛い顔が台無しだ。
「そういえば相手の男ってだれだ....?」
木の影で見えなかった相手の男を見るために少し横にずれて目を凝らす。
あ、あれは...
同じクラスの高坂春生。たしか右耳が聞こえないって担任が説明していた気がする。
すらっと伸びた足に小さい顔。
整ったパーツに色素の薄い髪の毛。
全く人と関わろうとしない女子の大好きなクール系。
それはモテないはずがない。