やさしい眩暈
*
―――どうして、こんなことになっちゃったんだろう。
天井を眺めながら、私は途方に暮れる。
見慣れた天井と、壁にかけてあるカレンダー。
お気に入りの照明。
寝心地のいい、いつものベッド。
ここは、まぎれもなく私の部屋だ。
それなのに―――。
「レイラさん、具合はどうですか?」
この部屋では聞こえるはずのない声が、当たり前のように私を呼ぶ。
「ルイ………もう本当に大丈夫だから」
私はふとんに埋もれたまま、傍らでじっと見つめてくる顔を見上げて答えた。
それでもルイはまだ納得できないようで、いぶかしむように私を見つめている。
「ただの貧血だから、本当に大丈夫。昼ごはん食べてなかったからだよ、きっと。迷惑かけてごめんね」
まだ目の前はほの暗いものの、吐き気はほとんど治まったので、気分はそれほど悪くもない。
―――店で倒れてしまったあと、スタッフルームのソファで横になったけど、なかなか良くならなかった。
そこで見かねたルイが、私の断りを無視して、勝手にタクシーを呼び、
結局は私の部屋まで送ってくれたのだ。