やさしい眩暈







―――どうして、こんなことになっちゃったんだろう。



天井を眺めながら、私は途方に暮れる。


見慣れた天井と、壁にかけてあるカレンダー。

お気に入りの照明。

寝心地のいい、いつものベッド。


ここは、まぎれもなく私の部屋だ。


それなのに―――。



「レイラさん、具合はどうですか?」



この部屋では聞こえるはずのない声が、当たり前のように私を呼ぶ。



「ルイ………もう本当に大丈夫だから」



私はふとんに埋もれたまま、傍らでじっと見つめてくる顔を見上げて答えた。


それでもルイはまだ納得できないようで、いぶかしむように私を見つめている。



「ただの貧血だから、本当に大丈夫。昼ごはん食べてなかったからだよ、きっと。迷惑かけてごめんね」



まだ目の前はほの暗いものの、吐き気はほとんど治まったので、気分はそれほど悪くもない。



―――店で倒れてしまったあと、スタッフルームのソファで横になったけど、なかなか良くならなかった。


そこで見かねたルイが、私の断りを無視して、勝手にタクシーを呼び、

結局は私の部屋まで送ってくれたのだ。



< 105 / 250 >

この作品をシェア

pagetop