やさしい眩暈
「お昼食べてなかったんですか………」


「人手が足りなくて休憩とれなかったから」


「そっか………じゃ、朝は?」


「…………」


「食べなかったの?」


「………ちょっと、食欲なくて………」



ルイは呆れたように息をもらした。



「もう、レイラさん、しっかりしてくださいよ。ちゃんと食べなきゃだめでしょ。食欲なかったなら体調悪いんだから、休まなきゃ」



眉を下げたルイが、ベッドの端に頬杖をついた。


年下の男の子に諭されて、情けないやら恥ずかしいやらで、顔が赤くなったような気がする。

私は毛布を目許まで引きあげた。



「………さっきレイラさんのこと抱き上げたとき、あまりにも軽くてびっくりしましたよ」



ルイがため息まじりに言う。


それから、ふいに私の手首をつかんだ。



「手も、こんなに細いし………」



大きな掌に包み込まれた手首が、ふわりと温かい。


私は居心地の悪さに手を引っ込めた。



「あ、ごめんなさい! 思わず………」



ルイが、しまった、というように決まりの悪そうな顔になる。


私は首を横にふって、「ごめん」と呟いた。




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