やさしい眩暈
ルイがふいに手を離した。


それから、ゆっくりと私の顔のほうに手を伸ばしてくる。


その指は、一瞬、ためらうように止まったあと、そっと私の額に触れた。


前髪を優しく撫でるようにして掻き分けられる。



「………レイラさん」



ルイが苦しげに囁いた。



「俺のこと―――」



そのとき、電話の着信音が鳴り響いた。


ルイはびくりとして手を離す。



その目が、テーブルの上に置かれていた私の携帯をとらえた。


私も同じように視線を向ける。



「………電話、ですか」



私はこくりと頷き、ベッドから身体を起こした。


携帯を手に取り、画面を見つめる。



リヒト。


私は躊躇いもなく通話ボタンを押した。



「………もしもし」


『レイラ、今から来いよ』


「わかった」



ぷつりと電話が切れた。


ルイが目を見張って私を見つめている。



「………誰からですか?」


「付き合ってる人」


「………なんて?」


「今から来いって」



ルイが息を呑んだ。



「レイラさん、わかった、って答えましたよね。今から行くつもりなんですか?」


「うん、行くよ」



私ははっきりと答えた。




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