やさしい眩暈
「俺ならあなたにそんな顔させない。そんな寂しそうな顔、絶対にさせないのに………」




―――なんてことを言うんだろう。



なんてこと言うの、ルイ。


やめて。

それ以上、言わないで。



そんなにまっすぐな目で私を見ないで。



「どうしてもその人じゃないと駄目なんですか」



私は必死に首を動かして、うなずく。


それから、念を押すように何度も何度も頷いた。



「どうしても?」


「うん………」



ルイが苦しげな顔のままで、唇を震わせた。


その間から、細く声が洩れてくる。



「………俺のこと、好きになってくれませんか」



懇願するようにルイが言った。


私は意表を突かれて目を見開いた。



「俺を好きになってくれませんか」



ルイは重ねて言う。


私はふるふると首を横に振った。



「無理ですか? どうしても? 俺のどこが駄目なんですか。何が足りないんですか」



ルイに何が足りないか?


そんなの、考えたこともない。


私の知っている限り、ルイには駄目なところなんてない。


むしろ、すごくいい子だと思っている。



でも………。



「どうやったら、どこを直したら、俺のこと好きになってくれますか?」



それは、無理だ。



私が好きなのはリヒトだから。


リヒトの魅力に私は囚われているから。




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