やさしい眩暈







12月も終わりが見えてきて、日に日に寒さが増してくる。


水が凍りそうに冷たくて、洗い物を終えた指は真っ赤に染まっていた。



「水、めっちゃ冷たいよね」



カウンター越しにユカに声をかけられて、私はこくこくと頷いた。



「やばい。指、動かない」


「だよねえ。かといってお湯で洗うと、最近、あかぎれとかできちゃうんだよね、あたし」



ユカがため息をついて言うので、私は冷えきった指を擦りながら「そうなの? つらいね」と答えた。



「昔は全然大丈夫だったのにさ。ああ、年だなあとか思うよ」


「それは私も思う。肌の乾燥とかすごいもん。疲れもなかなかとれないし」



そんな老けた会話をしていると、社員研修から戻ってきたミサトさんが口を挟んできた。



「ちょっと、やめてよね。あんたたちがそんなこと言ってると、5つも歳上の私は非常に悲しい気分になるんですけど?」



私とユカは笑って謝った。




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