やさしい眩暈
「そういう年寄りくさい話してるとね、つられて老け込んでいくもんなのよ。

私たちはまだ若い!って胸張ってなさい。

若い気持ちでいれば、人生はいつだってやり直せるんだから」



「それ、ミサトさん哲学ですか?」



「そうよ。やろうと思えばいつでも人生のリセットはできる。この年になったらもう無理とか、もう変われないとか、そういう年寄りくさい考え方はしちゃだめよ」



ミサトさんは冗談ぽく言ったけど、その言葉は、なぜか私の心に深く突き刺さった。


人生はいつだってやり直せる。

もう無理、もう変われないと思ったらいけない。


まさに自分の考え方を言われているような気がした。



リヒトのために全てを捨てた私は、もう後にはひけない。


リヒトに囚われた私は、もう二度と離れられない。



でも、それは私にとって、変えようもない事実だという気もした。



ルイの顔がふいに思い浮かぶ。


こちらがいたたまれなくなるほど真っ直ぐに、一途に私を想ってくれているルイ。


あんなに優しくされても、やっぱり私の目にはリヒトしか映らないから。


だから、私はきっと、もう、変われない。




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