やさしい眩暈
なんでそんなことを訊くんだろう、と不思議に思いながら、私は答える。



「飲み物をどうしようって訊かれたから、チャイをすすめたの。温まりますよって」


「それだけ?」


「うん………どうして?」



ルイはちらりと客席のほうを見た。


それから視線を戻し、ティーカップに注いだチャイをスチーマーにかけて温めながら、ぽつりと言う。



「………林田さんて、レイラさんにだけすごく話しかけるじゃないですか。言葉は悪いですけど、なんて言うか、あの………狙ってる、みたいな………嫌な感じですよね」



低い声で呟くように言った言葉を聞いて、私は思わず目を丸くした。


ルイがひとに対してこんな言い方をするのは初めて聞いた。


いつもルイは、どんなに嫌なことや大変なことがあっても、陰口も愚痴も決して口にしたりしないのだ。



「ルイ………お客さんに対して、そんな言い方………」



諭すように言うと、ルイは即座に「分かってます!」と遮った。



「こんなふうに言ったら駄目だって、分かってますけど………」




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