やさしい眩暈
「でも、どうしてもレイラさんに言っておきたくて」


「………なにを?」


「気をつけてくださいって。あの人はきっとレイラさんを………そういう目で見てるから」



ルイの言いたいことは分かったけど、納得はできなかった。


林田さんは普通に話しかけてきただけだから。



「大丈夫だよ。それはルイの気にしすぎ」


「そんなことないと思いますけど」



ルイは幽かに唇を尖らせてから、温めおわったチャイをカウンターにことりと置いた。


私はそれをトレイにのせて、「大丈夫だって」と笑いかけて、ホールに戻った。



「お待たせいたしました」


「ありがとう、レイラちゃん」



林田さんはにこにこ笑い、カップをテーブルの上に置く私の手に視線を落とした。



「レイラちゃんて、細いよねえ」


「そうですか?」



首を傾げて答えると、林田さんがいきなり手を伸ばしてきて、私の袖を捲りあげた。


びっくりして、反応できない。



「ほら、こんなに細い。ちゃんとごはん食べてるの?」


「………た、べてますよ」



笑いながら答えて、私はさっと手を引いた。


すると林田さんは顔を上げて、今度は私の上半身に目を走らせた。




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