やさしい眩暈
「でも、意外と、胸は結構あるよね。あ、もしかして、彼氏に揉んでもらってるのかな?」



にやにやしながら言われたその言葉の内容を理解した瞬間、かっと頭の中が熱くなったような気がした。



「………な、なにをおっしゃるんですか………」



私はなんとか作り笑いを浮かべて、そのまま踵を返そうとした。


その瞬間、「あ、ちょっと待ってよ」と言われて、立ち止まるしかなくなる。


私はぎこちない笑みで振り向いた。



「はい、なんでしょう?」


「ちょっと訊きたいんたけど、いい?」


「………はい」


「レイラちゃんてさ、美人ってよく言われるでしょ」



私はトレイを胸元で抱き締めて、少しうつむく。


こういう話は、嫌だ。


それに私はたいして美人でもない。

お世辞だと分かりきっていた。



「そんなことありません」


「またまた。ねえ、彼氏いるの?」


「………いえ、あの」


「あれ? もしかして、いない? 意外だな。じゃあ、僕と―――」



林田さんがそう言うと同時に身じろぎをした瞬間、いきなり動きを止めた。



目を見張った林田さんがさっと視線を動かしたので、私もつられて顔を動かす。


視線の先には、ルイがいた。




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