やさしい眩暈
『―――レイラ? なんだよ』
いつものように素っ気なくて冷たい声。
私はごくりと唾を飲み込み、それから、なんとか声を絞り出した。
「………リヒト。今、どこ? 今、なにしてるの?」
なんて愚かなことをしているんだろう、私は。
頭の片隅で、もう一人の私が嘲笑っている。
お前は馬鹿な女だ、って。
『…………』
リヒトはしばらく何も言わなかった。
数十メートル先で女の子と手を組んでいるリヒトの表情は見えない。
女の子が首を傾げて見上げると、リヒトは彼女の頭をぽん、と撫でた。
その瞬間、悪魔の手に心臓を鷲掴みにされたような気がした。
『あ? なんでそんなこと訊くんだよ』
リヒトのぶっきらぼうな声。
いつもと同じはずなのに、いつもの何百倍も冷たく感じる。
「………ごめん。ただ、なんとなく、気になったから」
今、何をしているの?
そういえば私はリヒトに、こんなとりとめのないことさえ訊いたことがなかった。
きっと世界中の恋人たちが何万回も繰り返してきただろう言葉なのに。
ふいにそんなことに気がついて、なぜだか、泣きたいくらい虚しくなった。
いつものように素っ気なくて冷たい声。
私はごくりと唾を飲み込み、それから、なんとか声を絞り出した。
「………リヒト。今、どこ? 今、なにしてるの?」
なんて愚かなことをしているんだろう、私は。
頭の片隅で、もう一人の私が嘲笑っている。
お前は馬鹿な女だ、って。
『…………』
リヒトはしばらく何も言わなかった。
数十メートル先で女の子と手を組んでいるリヒトの表情は見えない。
女の子が首を傾げて見上げると、リヒトは彼女の頭をぽん、と撫でた。
その瞬間、悪魔の手に心臓を鷲掴みにされたような気がした。
『あ? なんでそんなこと訊くんだよ』
リヒトのぶっきらぼうな声。
いつもと同じはずなのに、いつもの何百倍も冷たく感じる。
「………ごめん。ただ、なんとなく、気になったから」
今、何をしているの?
そういえば私はリヒトに、こんなとりとめのないことさえ訊いたことがなかった。
きっと世界中の恋人たちが何万回も繰り返してきただろう言葉なのに。
ふいにそんなことに気がついて、なぜだか、泣きたいくらい虚しくなった。