やさしい眩暈
*
結局ルイは、私の住むアパートまで送ってくれた。
時間も遅かったから何度も断ったのに、それでもルイは頑なに首を横に振るばかりだった。
『こんなに泣いてる人を一人で帰せるほど、俺は冷たい人間じゃないつもりなんで』
『………もう泣いてないよ』
『駄目です。まだ目が潤んでるから、合格はあげられません。不合格です』
『なにそれ』
合格とか不合格とか、なんだかその言い方がおかしくて、噴き出してしまった。
『一秒でも長くレイラさんと一緒にいたい、っていう下心も、もちろんありますけどね』
茶目っ気たっぷりに微笑みかけられて、結局は断れなくなってしまった。
部屋の前まで来て、お茶くらい出さないと悪いかな、どうしよう、と迷っていたら、ルイはくすくすと笑った。
『俺を部屋にあげてもいいものか、悩んでますね』
『………』
『いいですよ、お茶なんて。恋人がいる女の人の部屋に、ずかずかあがりこんだりできませんよ』
『でも、この前は部屋に入ったよね』
『あれはイレギュラーな事態だったんで、ノーカウントです』
ルイは明るく笑って、手を振って帰っていってしまった。