やさしい眩暈
「ほんとに?」



ルイがぱっと顔を輝かせた。


私は慌てて手を振り、釘を刺す。



「私にあげられるものだったら、ね。何でもあげられるわけじゃないよ」


「なるほど。じゃあ、すごく簡単なことにします」



ルイが意味深な言い方をしたので、どきりとした。


すごく簡単なこと?

それって、なんだろう。


まさか、とんてもないことを要求してくるんじゃ………。



深く考えもせずに返事をしてしまったことを後悔していると、ルイがにやりと笑った。



「今日の仕事が終わったあと、5分だけ、俺にあなたの時間をください」



私は自分の想像が自意識過剰すぎたことに気づき、赤面しそうになる。

それをなんとかおさえて、ルイに訊ね返した。



「時間? ………どうして?」


「まあ、理由はさておき。お時間、いただけますか?」


「うん………いいよ」




ルイは微笑んで、小さく「よかった」と呟いた。




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