やさしい眩暈
蓋を開けると、あわい青紫色が広がる。


うぶ毛のようにふんわりとした細い繊維素材の布のようなものが、きれいに折り畳まれて箱の中に収まっていた。


そっと手で触れると、仔犬の毛並みのような柔らかさを掌に感じる。



手にとって広げてみる。


細長い形をした毛織りの布だ。



「マフラーです」



ルイが微笑むような声で囁いた。


私は目をあげる。



「レイラさん、いつも寒そうな格好してるから………」



ルイの声も瞳も、あくまでも優しい。


私はもう一度視線を落として、淡紫のマフラーを見つめる。



「………すごく柔らかくて、軽い」



独り言のように呟くと、ルイが私の手からマフラーをそっと抜き取った。



「カシミヤです。手触りがよくて、軽いのに暖かいって聞いたから」



その言葉を聞いて、私は驚いて目を見張り、顔をあげる。



「カシミヤ? 高いでしょ………そんなの、もらえないよ」


「意外とそうでもないんですよ。申し訳ないですけど、ブランドものじゃないんで」


「でも………」



もしかしたら一万円するかしないか、くらいの値段なのかもしれないけれど、

それでも、独り暮らしをしている学生にとってはかなりの出費のはずた。




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