やさしい眩暈
「これはバイト代を貯めて買いました。お金は、自分が欲しいものを手にいれるために稼ぐものでしょ?」



ルイが両手でマフラーを広げる。


明るくて鮮やかな色彩が目の前に溢れた。



「俺はこの一ヶ月、レイラさんに何かをあげたくて、がんばって働いたってことです。だから、あなたがもらってくれないと困るんです。努力が水の泡じゃないですか」



ルイは目を伏せて微笑み、私の首にふわりとマフラーをかけた。


それからくるりと端を回す。



途端に、柔らかくて軽やかな、優しい温もりに包まれた。


ルイみたい、とふいに思った。



「つけ心地はどうですか? かゆいとかないですか」



こんなときにまで、ルイは気づかわしげに訊ねてくる。



「大丈夫。すごくあったかい」


「よかった」



ルイがほっとしたように白い息をもらした。


首を包みこむ柔らかな温もりに手を触れる。


なんて優しいんだろう………。



「………本当にいいの? こんなものもらっちゃって………」


「いいに決まってるでしょう。俺がもらってほしいんです」



ルイはきっぱりと言い切った。




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