やさしい眩暈
あわてて遮ろうとしたけれど、ルイは止める間もなく言葉を続けた。



「レイラさんがつけてるマフラー、俺がクリスマスプレゼントにあげたものです」



リヒトの視線がすっと動いて、私の首のあたりにとまった。


感情の読めない静かな瞳が、淡紫のマフラーを見つめる。


リヒトがなにを考えているのか、なにを感じているのか、まったく分からない。



思わずマフラーに手をあてる。


リヒトが少しでも不機嫌になるのなら、すぐに外そうと思った。



でも、リヒトの表情はなにひとつ変わらない。



「………ふうん。べつに、いいんじゃねえの?」



リヒトはゆっくりとルイに目を向け、淡々と答えた。



「レイラが誰とどんな付き合いしてようが、誰から何もらおうが、俺には関係ねえからな」



冷ややかな口調だった。



「………そうですか」



ルイが独り言のように答えた。


私はマフラーから手を離す。



無意識にそうしてから、また自分に嫌気が差した。


リヒトの顔色を窺って、機嫌を損ねるなら外そうと思っていたのに、

せっかくプレゼントしてくれたのだからと言い訳をして、ルイの機嫌までとろうとしている。



私は最低にひどい女だ。



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