やさしい眩暈
*
翌日のクリスマスは、シフトが入っていなかったので、一日中ふとんにくるまったまま、部屋で過ごした。
リヒトから連絡がくるかもしれないと、携帯電話はすぐに手に取れる場所に置いておいた。
でも、着信音は鳴らなかった。
一度だけ、メールの受信を知らせる音が鳴ったけれど、リヒトはメールをしないので、私は確かめることもしなかった。
ぼんやりと壁を見つめる。
私の視界の真ん中、ふたつのマフラーがハンガーに掛けてある。
頭の中では、リヒトとルイのことがずっとぐるぐる回っていた。
今までは、部屋に一人でいるときは、リヒトのことばかり考えていた。
でも、昨日あんなことがあったから―――どうしても二人のことを考えてしまう。
私はリヒトのことが好きだ。
―――好き? ちがう。
そんなありふれた言葉では語れないくらい、私にとってリヒトは、唯一無二の絶対的な存在だ。
リヒトは私の全て。
私の世界はリヒトを中心に廻っている。
それは、今も昔も変わらない。
だって、こうしている今でも私は、あるかも分からないリヒトからの呼び出しを待ち続けている。
―――それなのに。