やさしい眩暈
ベッドに戻ろうとしたとき、電話の着信音が鳴った。


私は急いで携帯電話をとり、通話ボタンを押す。



「………もしもし」



ずっと横になっていたせいか、喉から出た声は、かすかに掠れて震えていた。



『レイラ、今から来いよ』



いつものように命じるリヒトの声が、私の鼓膜を甘く震わせる。


私は一も二もなく、「うん」と答える。



「すぐ行く」



リヒトは何も言わずに電話を切った。


私は急いで気がえを済ませ、寝癖を治し、ファンデーションと口紅を塗って、部屋を飛び出す。




聖夜に浮かれる街に目もくれず、私はひたすら走り、ルイの部屋の前にたどり着いた。


チャイムを押してしばらくすると、ドアがゆっくりと開かれた。


愛しい顔が隙間から覗く。



「―――ごめん、遅くなって」



そう言って謝ると、リヒトは何も言わずに小さくうなずき、私を中に招き入れた。



「ごはん、食べた? いちおう材料買ってきたけど」



リヒトの背中に声をかけながら、スーパーのレジ袋を調理台に置く。



「いや、いらない」



ルイは素っ気なく答えたあと、ちらりと私に視線を向けた。



「それより、こっち来いよ」




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